だけど私は目を覚ましてしまった。


ギリギリのところで父がロープを切ったらしい。


目が覚めた時、父の腕の中にいた。


頬を叩く温かい手の温もり。

何年かぶりに何度も呼ばれた自分の名前。



その時の事を忘れない。


本当は
生きたいと思った事。


父の腕の中が、こんなにも温かいんだと感じた事。



目を開けた私を父は抱き寄せて背中を摩った。


「大丈夫か?何をしてるんだよおまえは…」



声をあげて泣いた。



死にたい理由が
この家庭にあるだなんて言えなかった。




言う事を聞かない、
我慢できない自分に責任があるのだから。


父と母を傷つけたくないと思ったから。



なのに



それなのに…