偽者のような恋人の関係を続ける中で、あの日佐藤さんが言った一つの言葉が頭から離れなかった。


「一緒にいて幸せ」


きっとそれは、本当に嬉しかったからだと思う。


しかし、素直になることを恐れ、失うことを恐れ、傷つくことを恐れていた私の心は、たったひとつの言葉ですべてを露に出来る程、単純には動いてくれない。


ただそれだけで、ただその言葉だけで幸せだとは思えなかった。



この付き合いもどうせすぐに終わる。



私の瞳にはそんな未来しか映っていなかった。