「佐藤さん?どうしたんですか?」
思いもよらない人からの電話に自分が何かしたのかと頭に過ぎらせる。
「寝てた?」
「いや起きてましたけど。どうしました?」
「携帯忘れて帰ってるよ」
「え!?」
ケーキを届けた時お店に携帯を置いてきてしまった事を、この時まで気づかなかった。
「まだ起きてる?」
「え?はい」
「じゃあ届けてやるよ。家教えて」
「いいんですか?」
「いいよ。帰るついでだし」
「でも」
「いいから家、教えて」
電話を切ると、私は部屋に戻りかけられたコートを羽織って髪をといた。
店から家までは車だと10分もかからない。
階段を下り道路沿いの道まで出ると、冷たく刺すような風の中で佐藤さんが来るのを待った。