過去の事とはいえ、いざその場所を目にするとやはり辛い。


「どうした?」


黙り込んだ私の顔を淳が覗きこむ。


「なんでもないよ」


外はもう肌寒い季節。


何年か前はコウとこの場所にいたのに今は違う人といる。


確実に時間が経過しているんだと思わされた。


「淳の家ってどこなの?」


「見たい?」


そう聞かれたのが嬉しかったのか、淳はゆっくりと車を走らせる。

細い住宅街に入り、オレンジ色の光が下から照らす綺麗なマンションの前に停まった。


「ここ」


「へぇ、すごい綺麗だね」


それはあの頃にはなかったマンション。


「先月出来たばっかりで新築だからね」


「すごいね、いいなぁ」


大学生なのにこんなに綺麗なマンションに住めるんてと羨ましくなった。