中には眼鏡をかけた四十代半ば辺りの男性医師が一人、その後ろに研修生らしき白衣を着た若い男性が四人立っていた。



「今日はどうしました?」


こちらを見る事もせず無愛想な医師に一瞬何を話せばいいのか躊躇った。


「えっと…」


聞きたい事は山ほどあった。


「母が私の事をおかしいと言います。いつもおまえは病気だと言います。私は、自分ではなく母がおかしいと思っているんですけど…私が病気なんでしょうか?」



「病気って?」


「わかりません…でもいつも母がおかしいと言うので、本当におかしいのかな…と」


「ふーん、そう。他には何かある?眠れないとか、食事がとれないとか」


「怖い夢を見る事が怖くて眠れない事があります。」


「死にたいとか、そういう事は?」


「今はありません」



医師と目が合ったのはほんの一瞬だけだった。


「軽いうつ病ですね。薬も必要ないでしょう。一応睡眠薬を少しだけ出しておきましょうか?眠れなかったら飲んで。また何かあったら来て」


淡々と話す医師の言葉が耳に入っても、なんだか腑に落ちない感じだった。