「自分の子供によくそんな事出来るよな。おかしいよ、そんな痣ができるまで殴ったりするなんて」


「…多分、普通じゃないんです。
私の親は、自分が1番可愛い人間だから。
子供なんてどうでもいいんです。きっと」


私がそう言うとけんちゃんはお酒の入ったグラスを持って私の隣に座り直す。



「…俺もね、10歳まで母親がそんなんだったんだよ。
よく殴られてた。
飯食わしてもらえないなんて当たり前でさ。
うちは親父が仕事が忙しくて殆ど家に帰って来る事もなかったから、
親父もずっと気付いてくんなくてさ…」



「10歳までって…離婚した、とか?」



「いなくなったんだよ。
失踪したんだ。ある日突然。
今でも見つかってないから生きてるか死んでるかもわかんないんだけどね」


なんて言えばいいのかわからなかった。

なんて言ってほしいのかも

わからなかった。