「さえこちゃん!!」
「あ…こんばんわ」
向こう側から駆け寄ってきたのはけんちゃんだった。
「大丈夫?」
「え?」
「紗枝に言われて迎えに来たんだよ」
けんちゃんは私の足元から額までを目でなぞって
眉間にシワを寄せた。
「あ…そうなんですか、すみません」
「いいよ。それより乗って」
私の手から荷物を取り歩き出したけんちゃんの後ろに着いて歩く。
すぐ近くの道路にエンジンを着けたままのセルシオが止まっていた。
助手席のドアを開け
けんちゃんはどうぞと促す。
私は汚れた足でそこに乗る事を戸惑いながらも
言われるままに体を動かした。