感覚を忘れた手で涙を拭う。


これが夢ならいいのに―――――


歩きながら何度もそう思った。


泣いて泣いて、どれだけ涙を流しても
苦しみから、寂しさからは逃れられなかった。


家に着いたのは夜中の3時を過ぎた頃。


はやく布団に入りたい。



やっとの事で家のドアに手をかけた時、その異変に気付く。


鍵がかかって開かない。


慌てて飛び出して鍵を持って出なかったから、もしかしたら誰かが開いてた鍵を閉めてしまったのかも。



チャイムを押すわけにもいかず、私は玄関横の階段に体操座りしてその足をコートで包んだ。


冷たくなった震える体を手で摩り寒さを凌ぐ。


家の中に入れたのは朝の7時頃、
母が仕事に出る時だった。



「何してるの?」


母は小さくなって座っている私を見て言った。