「好きな人ができた」



「嘘…でしょ…」


「今日その人と一緒にいた」


「嘘でしょ!?」


「本当に」


心が

追い付かない。



「何それ…」


コウはまた黙り込む。


「…いつから?」


「一ヶ月くらい前に告白されてから」


1番恐れていた事が現実となった。



「でも…何もしてないよね…?」



何も言わないコウを見て
何となく、次に出てくる言葉はわかっていた。


だけど
信じたくなかったから。



「何もしてないよね!?」



強い口調で言う私に
コウは諦めたように小さな声で言った。


「キスした」


「…キスだけ?」


「やったよ。」



「嘘でしょ……」


俯いて涙を落とす私に
コウはごめんと呟く。


「…最低」


「ごめんさえこ」


コウにまた千円札を握らされ、それを手に取り胸に殴りつけて言った。



「好きになるんじゃなかった!」



背を向けて歩き出した私を
コウが追い掛けてくる事はなかった。