「さえこ!!」



呼び止められ振り向いた先にはコウが立っていた。



「おまえ何してんだよこんな所で!」



コウは心配そうに私に近寄る。



「どうして別れないといけないの?」



たった何日か会えなかっただけなのに、コウに会ったのはものすごく久しぶりのように感じた。


黙り込むコウは今までに見た事のないような冷たい顔。


「言わないんなら別れないから」



悪いところがあるなら話し合って解決できると思った。

好きだからわかりあえると思っていた。


だから……。



「…傷つけたくないから言いたくない」



「何それ…言ってくれなかったら、私、ずっと気になってコウの事忘れられない」



そう言うとコウはポケットから四つ折にした千円札を数枚取り出して私の手に握らせた。



「何これ…」


「タクシー呼ぶから」


「いらない」


「いいから」



「理由教えてくれるまで帰らない!」



引き下がろうとしない私が返した千円札を握りしめ、コウは眉間にシワを寄せてため息をついた。