「夏琅………」

俺はベットの前に立つ。

さっきまで騒がしかった病室は、時計の音しか聞こえないほど静かだった。

ゆっくりと起き上がった夏琅は、窓枠に右の肘をついて窓の外を
ながめ「なに?」と返事した。


「お前さ…いつまで黙っとくつもりなんだよ?」

「…………」

「今はまだ疑われてないと思うけど、盲腸だなんてそんな嘘はすぐにバレんぞ?」

きっと來は何かに気づいてた。

無駄に勘の良い涼介や、よく周りを見ている花梨にバレるなんて、時間の問題だ。


「言えねー」

「夏琅……」

「由輝だってわかるだろ?
今日さ、学校行って俺が入院したって知ってみんなどうだった?」

どうだった、って………

俺は返事に困った。


「俺がいなくなって、もしみんなが喜んでいたなら…俺は話すよ?でも………」

夏琅の言葉に今朝の様子が脳裏に浮かんだ。

夏琅が入院したと知って、みんなの心配そうな顔。

大きな病気じゃないと知って、
安心した様なみんなの笑顔。


「もちろん由輝の言う事だってわかってるよ。
………こんな嘘、いずれバレるに決まってる。でも、な?」