ニッとひとなつっこい笑顔を見せる利玖。

そこへ愛輝がどたばたと戻ってきた。


「由輝ちゃん!ピンクのヘアピンあったッ!あ、利玖!おはよー」

「はよ。準備できたか?」
「バッチリ!今日はお母さんいないから戸締まりしないと!」

再びバタバタとリビングから去っていった愛輝。


「あ、そっか!
今日は由輝がいるから明美ちゃんもう仕事行ったんだ」

俺の正面に座りテーブルにあった林檎を食べる利玖。


明美ちゃんとは、俺の母さんのこと。


普段なら母さんは愛輝が学校に行ってから仕事に行くが、

俺が朝練無しの時は「愛輝と利玖だと心配だけど、由輝がいるなら大丈夫ね!」など言って早くに行ってしまう。

つーわけで、今日は朝食から戸締まりまで、全部自分達でしなくてはならない。


「…って、呑気に林檎食ってる場合じゃねーぞ!」

時計を見るとすでに8時20分。

今から出ても遅刻ギリギリだ。


「早く行くぞ!!」

ドアの鍵を閉めて、ダッシュで学校にむかった。