また自分を見失う前にコイツからは離れる方が賢い。

立ち上がり背を向けるとツンッと何か引っ張られる感じがした。

続いてボトッと何かが落ちる音。

頭を捻って後ろを見てみれば、俺のシャツの裾を握っている相原。

「ヤだ。」

「は?」

「一人にしないでよ……」

「―――――……。そうやって」

「…?」

「そうやって相原由輝の代わりをつくるのか?」

大切な人を失って………

他の誰かで寂しさを紛らわしいて

他の誰かで記憶を上塗りして…

お前はそれで良いのかよ?


「造れるわけないじゃん……。」

「……………。」

「由輝ちゃんはもうイナイけど…でも、由輝ちゃんの代わりになれる人なんていない。」

他の人を由輝ちゃんの代わりにするなんて……そんなの由輝ちゃんが存在したこと否定してるみたいじゃん。

そう言って手を離す相原。

……分かってんなら良いんだよ。

俺は再びカーペットの上に腰を下ろした。

「ほら、寝ろよ。」

「うん……」

「お前さ、ちゃんと鏡で自分の顔見てるか?」

「なんで?」

「クマ、ヤバいから」

目の下をトントンっと叩く。