「ほら、買い物行くぞ」って言ってまた手を引いてくれるんじゃないかと、心のどこかで期待しながら河原を歩く。

そんな事、あり得ないのにね。


近くのコンビニで適当に食べ物を買い、行きとは逆向きに河原を歩いていく。

手を引かれる事も、大好きな声も優しい笑顔も、あの日みたいな
夕日も………今は何もない。

不意に足が止まり、思わずしゃがみこんだ。

あの日みたいに心地よい風が吹くけど、隣に由輝ちゃんはいない。

今はまだ、なにひとつ忘れる事なく憶えているのに……時が流れて全部忘れてしまうのかな?

由輝ちゃんがいたことも、声も、温もりも、笑顔もなかったみたいに忘れちゃうのかな?


他人の記憶に上塗りされて……

あの真っ赤な夕日を見たのは初めから私1人だったって。

そう思う日が来てしまうの?

人は忘れる。

どんなに大切だった想いも、人も記憶も、時間と共に過去になる。思い出になる。

「いやだ……っ」

どこを探しても由輝ちゃんは、
この世界のどこにもいない。

なのに私が由輝ちゃんの背中を
追いかけ続けたのは………
過去にしたくなかったから。