俺は頬を伝う涙を拭わず、愛輝の頭をグシャグシャに撫でた。


「……………由輝くんはな、」

いきなり出てきた由輝の名前に、俺だけじゃなく部屋にいた全員が栄先生を見た。

「泣いとったよ。毎回、毎回。
夏琅くんのお見舞いに来るたびに廊下で独り泣いとる子だった」

………由輝は今まで、俺が病気のことを打ち明けた日以外は、俺たちの前では一度も泣かなかった。

ずっと……ガマンしてたんだ。

「彼、言っとったよ。“親友が目の前で苦しんでるのに、何も出来ない腹が立つ”ってな…。ほんと友達想いの子だった………」



「栄先生…。事故の時のこと……詳しく教えてください」

利玖が頭を下げた。

「大丈夫なのかい…?」

栄先生は利玖を見つめた。

「俺は…俺たちは、例えどんな真実でもちゃんと受け止めます」

利玖がそう言った。

栄先生は順番に俺ら一人ひとりをゆっくり見つめた。

利玖、花梨、俊介、來、愛輝……そして最後に俺。

“君は受け止められるかな?”

先生の目がそう聞いている気がして、俺は深く頷いた。


「分かった…………」

栄先生はそっと目を閉じ、事故の時の話をした。