俺は小さくため息をついて、夏琅の手を握った。

「由輝の手、あったかいなー」

「何ならキスしてやろうか?」

「それは、來がいいでーす。」

2人であははっと笑う。


「由輝ってさー、なんだかんだでワガママとか聞いてくれるよな。普段はしっかり者なんだけど、
やっぱり甘いお兄ちゃん的な?」

「そうか?」

「おー、甘えたで手のかかる愛輝とは相性ピッタリだろ!」

「……別に」

ふてくされながら言うと、夏琅はハハッと笑ったあと欠伸をした。

「愛輝と仲直りしろよ…」

「気が向いたらな」

「もー…。たまには、お前から謝ってやれよな……」

「はいはい」

クスッと笑って、ゆっくり瞼を閉じていく夏琅。

「ゆきのて…あったかいな」

そう呟いて夏琅は静かに寝息をたてだした。


「おやすみ」

夏琅の手を離し、病室から出た。

パタンと扉を閉めた瞬間、俺はその場に崩れ落ちた。

夏琅の手は驚くほど細くて……
怖いくらいに冷たかった。


「……っ」

俺は泣いた。

決して声が漏れぬよう、

夏琅にバレないよう、

口を手で覆いながら、

涙が枯れるほと泣き続けた。