「っ、ゆき…」

――俺のことずっと忘れないで

すがる様に俺の服を握る夏琅。


「…っ忘れるかよ……忘れろって言われても忘れねぇよ…!」

俺は夏琅の肩をそっと掴んで、まっすぐ目を見つめる。

「だから…殺してなんて言うな。そんな事しなくても……みんな…絶対…忘れないから……」

溢れそうな涙を必死に堪えた。


Si j'ai oublie vous ne
remplissez pas.

(忘れるくらいなら)
(出逢ったりしてねーよ)


「ありがとう…由輝。ごめんな」

「分かりゃあ良いんだよ。………ほら、寝ろ。」

「おー」

横になり布団をかぶると、手を差し出してきた夏琅。

その意図がわからず首を傾げる。


「手ぇ……握って。」

「はあ?」

予想もしてなかった夏琅の言葉に思わず間抜けな声が出た。

「俺、そんなシュミねーし」

「俺もねーよ。ホントなら來が良いし。100歩譲っても愛輝か花梨が良かった」

「じゃあ、明日來に握ってもらえ。それまで我慢しろ」

「絶対にムリ」

「なんでだよ」

「淋しくなるから、」

「は?」

「由輝が帰ったあと、淋しくなるからムリ。明日まで待てない。」


「―――…ハァ」