「記憶は儚い。高校を卒業して…進学したり社会人になったり……みんな自分の道を歩いていく。
その中で俺、一人が置いていかれるのが嫌なんだ。段々と俺の存在が薄れていくのが怖いんだよ」
「そんなこと………」
「だから、お前の手で死にたい。そしたらお前は俺のこと忘れないだろ?」
「………っ、」
夏琅は俺たちから忘れられることを、何よりも恐れていたんだ。
みんなの前では気丈に振る舞い、独りで恐怖を背負っていた。
そんな夏琅が考えだした答え。
それは酷く哀しい答えだった。
一体どれだけ辛かったんだろう、
一体どれだけ苦しんだんだろう、
一体どれだけ泣いたんだろう、
いつも一緒にいたのに……
親友だと思ってたのに……
どうして気づいてやれなかったんだろうと嘆くことしかできない。
“由輝ちゃんがバスケして遊んでるとき、夏琅はずっと苦しんでるんだよ!?”
愛輝に言われた言葉を思い出す。
夏琅なら大丈夫だと思ってた…。
來が、愛輝が、利玖が、涼介が、花梨が…………みんながいるから大丈夫だと思ってた。
俺は夏琅のことを、何も分かっちゃいなかったんだ。