「「楽器なんて弾けないし」」

と、いうのがホンネ。

たぶん全員が思ったと思う。

でも、誰も言わなかった。

夏琅の意見を、否定なんてしたくなかったんだ。

2ヵ月後の秋祭りに参加するってことは、夏琅はまだ生きることを諦めてないって事だ。


「やる」

來が凛とした声で言った。

きっと來も夏琅の気持ちを分かってるんだと思う。


「私も!」

「やるやる!」

どうやら、みんな賛成のようだ。

張り切るメンバーを見て夏琅は、心底嬉しそうに笑った。


「ベースとドラムとキーボードは1人づつで、ボーカルとギターを2人づつにするか?」

「そだね。問題は誰が何をするかだよね…?」

うーん、と首を捻る。

夏琅以外はみんな、バンドなんて経験ないし…。


「んー…じゃあ、愛輝はボーカルが良いんじゃない?」

花梨が口を開く。


「私が?」

「うん。愛輝、歌上手いでしょ」

「「確かに」」

納得する俺らと、そうかな?っと首を傾げる愛輝。

こいつ、歌だけはマジで上手いんだよな。俺とは大違い。


「それに楽譜は読めなくても、歌は覚えられるだろ?」

夏琅が愛輝をからかう。