さりげなく愛輝の手を握って前を歩く利玖に、小さく笑みがこぼれた。

…利玖、がんばるじゃん。


「わっ」

「おっと」

なんて思ってたら、誰かの足につまずきコケそうになったのを涼介が助けてくれた。

「気ィつけろよ」

ポンッと頭を撫でられる。

「ん、ありがと」




何とか一番前までくると、由輝がステージの夏琅に話かけた。

「来たぞ、夏琅」

「サンキュー!」

マイクを使って夏琅が返事する。


「なに?どーゆーこと?」

辺りを見渡す愛輝。

「続いては、特別ゲストの崎本夏琅君でーす!」

「3年3組の崎本夏琅でーす!」

マイクを持った進行役と夏琅言うと体育館内が再び盛り上がる。

ちらっと來を見ると、まばたきもせずにまっすぐステージの上にいる夏琅を見つめていた。


「えーっと…俺は心臓の病気で、ドナーや治療方法が見つからない限り長くは生きられません。」

盛り上がっていた体育館内が、
ざわめきに変わった。

しかし、夏琅が再び口を開くと、自然と静かになった。


「俺には時間がありません。

どうにかして今までお世話になった人たちに感謝の気持ちを伝えたいと思いました」