「…はい」
腹の底からドスの効いた声を出す。
『涼!?絢芽ちゃんは!?絢芽ちゃんを出して!!』
はぁ?!なんだよそれ!!
知るかそんなもん!!
「だれ??」
隣からひょこっと顔を出した。
うっ…///
「母さんから」
「おばさんから?変わって変わって~♪」
ひょいと受話器を取り、
「もしもし、おばさん?」
『絢芽ちゃん!?』
「はい♪」
『良かったわ、無事で…涼に襲われてないかと思ってね』
……ん?
今、聞き捨てならぬ言葉が聞こえた…ような?
『襲われてないなら安心だわ♪じゃあね~』
ツーツー…
………クソババア!
今すぐ帰って来いやぁ!
絞めてやる!ぜってぇ絞めてやる!
「襲う?」
首を傾げ、キョトンとした顔で問いかけてくる。
「えっ?あ、なななんでもないよ!」
必死にごまかしてみた。通じるかは分からないが…
「そっか、だよね」
……つ、通じた
あぁ、絢芽は鈍感かつ天然だもんな。
ムリもないか。
…つーか、あのババア余計なお世話なんだよ。俺が絢芽をいつ襲おうとしー……
…すいません、ありました。本当にすいません
もう、しません。…多分……。
ぷにっ
「…ん?」
理性との相談をしていたら(おいおい…)、絢芽がほっぺをプニプニしてきた。
「柔らかいね♪涼くんのほっぺ好き」
ニコッと笑顔で言われ、顔が熱くなった。
「なっ?柔らかくなんかっ…///」
「可愛い…♪」
…な、なんか俺いじられてる。こんな絢芽初めてだ。……って事で、もうちょっといじられる事にしよう
いじられている間、ふと思いついた。
「旅行行こう!」
「…ほへっ!?」
旅行に行って、絢芽との仲を深める!
「急にどうしたの?」
ちょっと焦ってる絢芽
「休みに行こうよ。予定入ってるの?」
聞いてみると、黙ってしまった。
「…男?」
その言葉に、ピクッと反応した。
「ふーん。男……」
男ねー…
「堂々と浮気?」
「違っ…」
「じゃあ、断って俺と行こうよ」
そう言うと黙り込んだ。
「…はぁ、もういいよ」
絢芽から離れ、携帯をいじる。
「……りょ、くん」
無視すると、絢芽は涙目になった。
なんだよ、泣きたいのはこっちだよ。
「ちょっと出掛けてくる」
そう言い残し俺は家を出た。
――絢芽の携帯を持って…
~♪♪~
しばらく歩いていると絢芽の携帯が鳴った。
「…健……先輩」
その相手は健先輩だった
「“次の休みが楽しみだね”?」
まさかと思い、健先輩とのやり取りを見る
“次の休みに買いたい物あるんだけど一緒に行ってくれない?”
“うん、いいよ。私も丁度あったし”
“ありがとう”
誘ったのは健先輩、っと
でも、なんで絢芽は買いたい物あるんだ?
この前、買い物行った時買ったはずなのに…。やっぱり、デート……?
「…はぁ……」
「でも、旅行は行く」
1時間くらいぶらぶらと歩き、家に帰った。
「りょ、くん…」
「……なに」
「旅行の事なんだけど…っ」
言葉を詰まらせ何かを訴えてくる絢芽
「……なに」
「………い、く」
絢芽の言葉に目を見開いた。
だって、健先輩と約束してたはずなのに……
「涼くんの方が…大切、だから…///」
顔を真っ赤にさせ、(気づいてないであろう)上目使いで見てきた。
「ホント?」
「ぅん…///」
コクンと頷く絢芽を引き寄せ、チュッと額にキスを落とす。
「ちょっ…!?」
「嬉しい」
ニコッと以前のように笑うと絢芽の体温は急上昇
「わ、私も…」
フワッとした笑顔がなんともいえない絢芽。
「旅行…どこ行こうか?」
絢芽は少し考え、
「涼くんの行きたいとこ」
俺の行きたいとこ?
俺は別に、絢芽と2人ならどこへでも行く…なんて、言えません
絶対引くからな。うん、俺も自分で引いた
「私、海と山があるとこ行きたい……」
俺が意見を出さないため絢芽が意見を出した。
面目ない……
「山と海…おし、行こう」
「うん…!」
ルン♪として絢芽は立ち上がった。
「ちょっと出掛けてくるね」
鞄を持ち、玄関に向かおうとする絢芽を引き止める。
「外暗いよ。どこ行くの」
気が付けば外は日が落ちていた。時刻は6時
「最近、日が短いからダメ」
「お願い…!」
駄々をこねる子供のように言う絢芽に負け
「いいよ」
了解してしまった。
「本当!?じゃあ、行って…」
「ただし、条件付き」
「条件?」
――俺も一緒に行く。