年下彼氏は後輩くん★




さぁてと、アイツの事を絞めなきゃな


「…出てきなよ、奏斗くん?」

クスリと笑うと、死角に隠れていた江波が顔を歪めながら出てきた


「お前……」

江波は、少し言葉に詰まったが、

「ホントに絢芽の彼氏なんだな。絢芽は誰にでも優しいから…俺、街で喧嘩た後、傷だらけの俺を絢芽に助けられたんだ。けど、絢芽は名前だけ言って人混みの中に去って行ったんだ。」

そういや、喧嘩した人助けたって言ってたな

「そん時、絢芽がハンカチ落としてな…名前が書いてあったから、友達に聞いたらここの学校にいるって聞いて」

コイツ、本気で好きなんだ

でも、絢芽ちゃんはあげない

「…まぁ、ホントは告って付き合う予定だったんだけどな。まさか、彼氏がいるなんてな」


ハハッと、さっきまでの威勢はなくなり、力無く笑った







「……さっき、あんな事言ったけどさ…そんな自信なかったし、後付けてお前が彼氏だって解って、もうダメなんだって思った。実を云うと、これが人生で最初の恋なんだ」

空を眺めながら、そうボヤく


「あーあ、俺もこの青くて広い空の様に心が大きく純にならねーかな」

「…もう、様は済みました?」

「……あぁ………」


「では、お帰りはこちらです」

キィとドアを開け、ニコッと笑うと眉を釣り上げ「ふん」と出て行く江波


まぁ、アイツの気持ちは解る

あんな可愛い子に助けられたら、一目惚れだよな

俺だったら、間違いなく人の彼女でも奪ってる








とまぁ、俺は性格が悪い

最初は自分で、"ボク"とか可愛く呼んでたけど、今は"俺"だし

でも、絢芽ちゃんの前では"ボク"

絢芽ちゃんの中では、
涼くん=可愛い
この式が結びついている


だから、俺は"可愛い涼くん"を演じる

つい最近、俺の"本性"が出たが、その後に"可愛い涼くん"を演じれば丸く収まる


「…今、何やってるかなー……」

ボケーッとそんな事を考えていると、チャイムが鳴った







キィ


チャイムがなり、しばらくするとドアが開いた

「次もサボるの?」

上から降ってきた言葉
そして、声

今、一番会いたかった人


「今日のご飯何がいいかな?」

それだけを聞きにわざわざ来てくれたのか


「絢芽ちゃんのなら、なんでもいいよ」

そう言えば、彼女は困ったように笑い、

「肉じゃがでいい?」

「うん、ありがとう」

俺の好きなものを選ぶ


昔から、絢芽ちゃんは俺の好みを知ってるから、こういう時すごく嬉しい








同居生活から、何日か経って、気付いた。


絢芽ちゃんは俺に何かを隠してる

つまり、隠し事

俺に秘密にしてる事…


なんだろう


「涼くん?」

最近、ボーッとしてる事が多くなった


「涼くん!り、きゃあっ!?」



ダンッと絢芽ちゃんを壁に押し付け、荒々しく口付ける







「ど、したのっ…?」

絢芽ちゃんから、唇を離すと、肩で息をする


そんな、仕草で俺の心は打たれる

「……言って」


「ほぇ?」

「隠してる事全部言って!」

いきなり大声で怒鳴ったから、絢芽ちゃんはビックリして目を見開き、その後、ギュッと目をつむった。


「僕には言えない事?浮気してるの?僕の事嫌い?ねぇ、なんで言ってくれないの?」

絢芽ちゃんの喋る隙を無くすように言葉を続ける

「不満があるなら言ってよ!例え、絢芽ちゃんが僕の事嫌いでも、僕は絢芽ちゃんが大好き、手放したくない!どんな理由があっても別れる気なんかないから!」


言いたい事を言い、一息つく。

気まずくなったので、下を向くと、ふわりと抱きしめられた。


「隠し事なんか、ないよ…?」

「嘘だっ!絶対あるよ!」

そう言えば、絢芽ちゃんは困ったように笑い、んー、と考えた。






そして、

「あのね…?」

「……なに」

拗ねたように言うと「ゴメンね」ションボリとして謝ってきた。


「……」

なにも言わずにいると

「……別れる?」

「…えっ?」

突然の事で戸惑った。


「…涼くん、私の事嫌いでしょう?」








「…んで、そうなるんだよ!!」

ドンッと絢芽ちゃんを突き飛ばし、左手首を掴み、フェンスに押し付ける


「さっき言っただろ!?俺は絢芽が好きだって!何があっても別れねーよ!イヤがっても離さない、離れない!」


「りょ、くん…?」

「隠してる事は何!?なんで隠してるの!?俺には言えない事!!?」


ギュウッと力を込め、首に吸い付く

「いっ…」

首に紅く丸い印がついた

「なに?」

「…し方が……」

「聞こえない」

「話し方が違う……」


首についた印を、見つめながら

「あぁ、話し方。絢芽は可愛いのが好きでしょ、だからだよ」








「だからさ、俺は可愛くしてたんだよ。本当は可愛くなんかないんだよ」

「……」

俯いて黙っている絢芽


「俺、強引なんだ。だから、これから覚悟してろよ」

耳元で言うと真っ赤な顔から、大粒の涙が頬を伝う。


「…う、そ…ついたの?」

ポロポロと涙を流し、鼻をすすりながら問う。

「ゴメンね…?でも、好きな子の理想でいたかった」


「…私は、ありのままの涼くんがいい」

突然の告白

目を見開くと

「素の涼くんでいて欲しい」




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