光が消えたその瞬間、二人の姿は跡形もなく消えていたのだ。

(あん時あいつに助けてもらわなかったら、ワシはあの時死んでいたんだよな。タケルと出会ってから本当に幸せだった…。タケル…お前は幸せだったか?)
グサッ!!
イグレの体を貫く刃。そして一気に引き抜く。イグレの体から一気に噴水のように血がふきだした。
イグレの服が破れた見える背中には、大きな傷跡が見えた。
「タケル…ワシは幸せだったぞ…。」

タケルはパッと目を覚まし、飛び起きた。体の重みはすっかり取れていた。なにやら木が燃える匂いがする。しかもちょっとやそっとの量じゃない。
「…クロス!!」
パッと周りを見渡すと、すぐ隣でクロスはまだ眠っていた。
「クロス!クロス、起きろ!村に帰る!起きろ!」
激しくクロスの体を揺らす。
クロスは、寝ぼけた顔でゆっくりと体を起こした。まだ半分自体を理解していない。
「早く立て!走れ!」
起きた事を確認し、タケルは一足先に森へと走り出した。
「待ってよ!」
クロスは慌てて追いかけた。
嫌な予感がする。ダリオのあの目は、本当に殺る目だった。
(親父を知っているのか?いったい何なんだ。)
タケルは当時の事をまったく覚えていない。自分が酷い虐待を受けていた事などもう忘れてしまいたかったのだろう。イグレと出会った頃までの記憶はスッポリと抜けてしまっているのだ。
焼ける匂いはどんどんと近づいてくる。
(あの人、本当に村に何かしたの?お姉ちゃんは?)
クロスも鼻につく匂いで、だんだんとさっきまでの出来事を思い出してきていた。
村が見えてくる。こんな夜中に真っ赤に燃えている姿がはっきりと見える。まちがいなく燃えているのは、自分達の村であった。
二人の走るスピードがあがる。温度もどんどんと上昇してきた。酷く暑い。
「とりあえず皆を探そう。」
タケルは後ろについてくるクロスに指示した。しかし炎の燃える音、家が崩れおちる音しか聞こえてこない。皆はいったいどうなっているのか…?
二人はそれぞれの家に向かう。
「お姉ちゃん!?」
クロスの家はまだそれほど焼けていない。クロスは扉を蹴破った。
ぼーっと燃える炎の中、家中を見渡したが、クロスの姉の姿はなかった。
クロスは、すぐまた家を飛び出し、姉を呼び続けた。