「ああ!俺のオヤジが作った村なんだ!」
タケルは誇らしげだ。
「あんな所に村があるとは驚きだ!ぜひ、その話を聞かせてください。あの森の中でどのような生活をなさっているのか?」
ダリオが村の話にくいついてきた。ここでは何だからと、まだ腰を下ろしたりする事ができる森の入り口に移動し、じっくりと二人の話を聞く態勢をととのえた。
「ではお聞かせ願いたい。どのように暮らしているのか?どんな人達がいるのか?」
聞かないと気のすまない、答えないと許されない、なんだか脅しのような、なんともいえない威圧感を感じる。しかし、タケルもクロスも平和な村で暮らしている。人を疑うという事は知らない。なんだか、どよっとした重さを感じるが、タケルは口を開く事にした。
「みんなで畑たがやしたり…川の魚をとったり…なあ?」
しどろもどろ。クロスに確認をとりながら話すタケル。
「いろんな人がいるよ。みんな、戦争から逃げてきた人ばかりなんだ。お互いを深くはしらねえけど、みんな家族みてえに暮らしてる。」
「じゃあ君のさっきの魔法は誰に教わったんだい?」
ダリオは優しく微笑みながら尋ねた。
「あれはオヤジだよ。村長なんだけど、俺らに魔法や剣術を教えてくれるんだ。」
「素敵なお父さんなのですね?」
クロスは、黙って二人のやりとりを見守っている。
「ああ!俺とオヤジは血はつながってねえけど、俺のオヤジはアイツだけだ。俺な、オヤジと出会った頃の事、本当は覚えてんだ。俺、まだ小さくてなんでかもうわかんねえけど、泣いてたんだ。そん時、急に空から氷の刃が降ってきてよ…気づきもしなかった。急にさ、俺の体に何か多いかぶさったんだよ。俺、ビックリして涙も止まってさ…そしたら、オヤジが俺の事、守ってくれてたんだ…。それから逃げて、逃げて…この村に連れてきてもらったんだよ…。」
ちょっと思い出しながら、泣きそうになった。自然と片手を、首の方から背中にまわしオヤジの背中を思い出した。
「オヤジ、そん時の刃の傷が背中にずっと残ってんだ。…。あん時な…自分の背中からダクダクって出血してんのに、俺抱えながらさ…(この時代に生まれた事を恨むな!お前は幸せになるんだ!これから!絶対恨むな!)って…チビな俺には意味がわかんなかったよ(笑)」
タケルの話を、ダリオは表情ひとつ変えずに聞いていた。