「こうして碧をおぶって帰ったっけ・・・」
圭は小さくつぶやいた。
「そうだったっけ・・・?」
そんなことあったっけ?
圭との思い出はあの時のことしか鮮明じゃなくて・・・
全く覚えてない・・・
「あったあった。
碧が怪我して泣いてたんだっけ・・・」
懐かしそうに話す圭。
顔を見なくても声色だけでわかる。
「なぁ・・・・ちょっと寄り道してもいい?」
「ん?いいよ?
どこ行くの?」
圭の顔が見えないから声色で感情を判断しなきゃいけないと思うんだけど
圭が何を思っているのかわからない・・・・。
「秘密。」
そう一言だけ言うと黙り込んでしまった。
夜の道の中
あたしと圭の吐息だけが響いた。