俺は、朝一でグラウンドに向かった。

「ハァッ・・・ハァ」

さすがに誰もいない。

俺は、フェンスの方を見上げた。

菜緒の姿が思い浮かぶ。

眩しい光が、俺の目線を邪魔する。

「菜・・・緒」

バタン...

俺は、勢い付いて倒れた。

茶色い砂ぼこりをあげる。

真っ白なユニホームに砂がつく。

マウンドの方を無理矢理見る。

俺がいつも投げていた場所。

やけに懐かしく思う。

あの上の盛り土の上にある、投手板に立つ。

投げる。

このまま、キャッチャーのグローブの中に入ればいい。

ランナーは誰もいない。

ほら、ライトもレフトも暇してる。

あぁ、これが現実になればいいのに。

審判の声で、はやく

“ゲームセット”

って言ってくれよ。

最後の打席は俺で、カキーンと一発ホームラン。

甲子園進出です!

ってはやく言えよ。

なーんて、なにを言っているんだろう。

ばかみたい。

俺は、俺は、俺はーーーー・・・・・・