ボタンを押したものの、エレベーターが上階で止まってなかなか動かない。仕方なく、私は階段を使って1階まで下りた。
1階の廊下を玄関に向かって歩いていると、売店で買い物をしている岸本の姿が目に映った。
看病疲れからか、岸本はかなり憔悴している・・・
あ、そうだ!!
こっそり岸本の写真を撮って、古本屋の店主に一応確認してもらおう。
私は自動販売機の陰に隠れると、スマートフォンを構える。スマートフォンに付いているカメラを覗き込み、限界までズームアップした。
よし──
撮影時のシャッター音を気にしていたが、岸本は全く気付かなかった。
データフォルダを確認すると、誰なのかか判別出来るくらいの大きさには写っていた。私はスマートフォンをポケットに入れ、岸本に気付かれない様に病院から出た。
明日この写真を、あの古本屋に持って行こう。