店主は黙々と読んでいたが、ゆっくりと老眼鏡を外して言った。
「信じられない事だが・・・これは、私が使う文法そのままとしか思えない」
「え?」
では、店主の関係者が犯人という事なの?
「ただ、私はここまでの文法を、未だかつて誰にも教えた事がない。一体どうなっているのか・・・」
店主はそう呟くと、何かを考える様に黙り込んでしまった。
分からない・・・
教えてもないのに、店主の文法を使って小説が書かれているの?
一体何がどうなって──
「ああ、そういえば少し前・・・
韻について何度か聞きに来た学生がいたねえ 。名前までは聞いていないが、韻についての文献をいくつか買って行った。
あの子ならあるいは・・・」
「韻についての文献を、ですか?」
「そうだよ。
私が以前、参考にしていた文献だ。あれを読んでいれば、同じ文法を使うハズではあるが・・・素人にどうこう出来るモノではない。
まあ確かに、質問してくる事もかなり高度な事ではあったが」