私は頭の中を整理しながら、店主に問う。

「韻を使って催眠効果が起こせると聞いたんですけど、本当にそんな事が可能なんですか?」

「ああ、出来るよ。
かなりの熟練者なら、意図的に韻の配列を操作する事により容易くね」

老婆はあっさりと答える。
やはり、兄の言った事とは本当なのか・・・


「ただ――」

「・・・ただ?」

「そこまで出来る人物は、日本には数人しかいないハズだ。全員私の知り合いだよ」

全員知り合い?
それならば、韻の使い方や文章を見れば、誰が書いた物なのか分かるのではないか・・・


「あの、これを見て下さい」

私はスマートフォンを取り出すと、ケータイ小説サイトにアクセスする。

「この文章なんですが、誰が書いたものか分かりますか?」

店主は老眼鏡を掛け直し、スマートフォンの画面を食い入る様に覗き込んだ。