「は-い?うん…友達とごはん食べてる。うん,もお帰るで?…わかった。」


ナナセは席を立たずに少し小さめの声で話してた。






友達。






確かにそうやねんけどさ…。




「ごめんなぁ!あたしこの後,用あって!」

「…ヨリ戻ったん?」

「……ううん。都合のいー女になってもおた!!」

ナナセは無理して笑ってみせた。



ナナセが絶対ってゆうもんやからワリカンで会計を済ませ店を出た。

「改札まで送る。」

「ありがとう!」

他愛ない会話をして隣りを歩けてるのに。
充分進歩したのに。

俺はワガママやった。


「じゃあ…」

ナナセが定期を入れようとする手を握って,改札から少し離れたコインロッカーの前まで連れていった。

「よーた君?」

心配そうに俺を見上げるナナセを人目も気にせず抱き締めてしまった。

…誰が見てるかもわからんのに…。




「行くなや……。」

ふり絞った声。


「…ごめん。」




ナナセは,
「またね!」
って走ってった。





俺の腕には,
今までの女の濃い香水とは違う,

シャンプーの香りと。

うっすら甘いイチゴの香りと。

ほんの少しの後悔が残った。






ナナセ。






もお,俺…。





なんかすっげー!
……すきや。