「‥どうしたの?」
見上げると、まだ怒ったようなふてたような顔をしている。

「‥‥崚くんってなんやねん」
「え?」

意味がわからず聞き返すと、
「だーかーら!なんで下の名前やねん」
「‥ん?ああ、‥‥‥崚くん?」

見る間にまた不機嫌になってゆく。
「俺は合コンのときは名字やったのに」
「それは‥ふつうにそうよんでってゆわれたし、葉のともだちだから」

言い訳っぽいかな?
でも、ぜんぶほんとなんだもん。

「‥‥‥ねん」
「え?」
うつむいたまま低い声でこたえた葉の声はくぐもってきこえない。

「だから!崚くんて葉くんゆうてるようにきこえんねん!」
「‥‥だめなの?」

不機嫌とゆうより、またふてたような顔をして、抱き締められた。
「俺の下の名前呼ぶんは柚寿の特権やねん。あと柚寿の名前呼ぶんも俺だけがええねん」
「‥‥葉だけだよ?」

耳元で囁かれながら心臓が痛いように締まる、―――葉がここまであたしをすきだと思わなかったとかゆったら怒られるだろうが。