「効力…?」

「僕の母上はとても魔力の強い人だったんだ。
基本は僕と同じシールドだったけど、他にも色々な魔法が使えた。
…星来みたいに直に記憶を読んだりすることは出来なかったけど、一時的に、そして一部分だけを変える魔法は使えた。
とは言ってもその魔法を何かの食べ物にかけてそれを食べさせるという、とても古い魔法でしか使えなかったけれど。
母上は…分かっていたのかもしれない。
こうなる日が来るかもしれないってことを。
そしてそれを回避できないということも。
だからこうして…用意していた。

蒼刃は…父上の死を目の当たりにして放心状態だった。
だから母上に口に入れられるままにアメを飲み込んだ。
そして体内で母上の魔法が効果を発揮し始めた。
だから記憶が書き換えられた。」

「緑志は…どうして書き換えられなかったの?」

「僕は飲まなかったから。」

「どうして…?」

「アメにどんな魔法がかけられているのか分からなかったから…。」

「そっか…。
でもどうして…書き換えられたって分かったの?」

「…目覚めた蒼刃が…父上の死に触れなかったから。」

「え…?」

「どう考えてもおかしいだろう?
放心状態にまでなったのは、父上の死があまりにも衝撃的過ぎたからだ。
なのに、蒼刃はそのことを全く覚えていなかった。」

「…。」

「母上に書き換えられた記憶では、蒼刃と僕は母上と父上の戦闘中に母上の力で強制的にナチュラルアースへと送られたということになっていた。
…つまり、父上の死に蒼刃は立ち会っていないということになる。」