そこで徳島のお婆ちゃんが

「まあ、いいじゃない。次は私の自己紹介をするわね」

「私は佐久間芙美子と言います。徳島県の三好市にある池田町の山あいで農業をしています。私は、よく知らないのだけれど、池田町は昔、池田高校の野球が強くて有名だったらしいです」

「私は畑でお茶や栗や柿や野菜なんかを栽培しているけど、出荷しているのは、お茶と栗ぐらいです。お茶畑は息子がしているけど、それ以外のものは私も作っています。歳は七十五歳です。三人とも同級生なんだけど私が一番早く生まれたので一番年寄りです・・・というようなところです」

三人のお婆ちゃんの自己紹介が終わり、由紀が

「私は・・・自己紹介なんて、したことが無いから上手く言えないけど・・・名前は丸茂由紀です。歳は五十四歳で、主人は十二年前に事故で亡くなりました」・・・

隣で座っている理絵に

「ねえ、あと何言ったらいいの」

と訊くと理絵は

「何でもいいから、思いつくことを喋ったら」

と言うので由紀は少し考えていたが

「だめ、何にも思いつかない。趣味もこれといって無いし、特技もあるわけじゃ無いし、仕事もしていないし、何にも無しで~す」

と言うので真知子お婆ちゃんが

「由紀さん、せめて住んでいる所くらい教えてちょうだい。それともシークレットなの」

と言うので、由紀はえっという顔をして

「シークレットだって。私なんか英語を混ぜて話すの苦手だから、なかなか言えない言葉ね・・・」