勇太が
「京都も大学生の時に行ったきり、長い間、行っていないなぁ。そういえば、三十三間堂の印象が強く残っていて、もう一度、見てみたいなぁ。あそこの仏像群はすごいですね」

と宮西に話しかけると、宮西は

「確かに、お堂の中の千一体千手観音立像には圧倒的な迫力があり、外国人観光客なんかにも大変人気があります。もしよろしければ京都へ観光で来られた時には、私をお呼び下さい。観光タクシーのプロとして、三十三間堂を始め、精一杯案内させていただきます」

勇太の隣で話を聞いていた理絵が

「私も三十三間堂へ行ってみたい。ねえ勇太、お四国巡りが終わったら、帰りに京都へ寄ろうよ」

「うん、そうしようか。休暇は充分にあるから一緒に京都の観光をしてから帰ろうか」
と勇太は理絵に答えた。そして

「京都へ行く前には電話をしますから、よろしく」
と宮西に伝えた。

会話を聞いていた紀恵お婆ちゃんが

「私も、たまには京都へ遊びに行くことがあるし、行く時は連絡するから、その時には、またお願いするわ。よろしくね」

と言い、他の人も京都へ遊びに行った時には、連絡するから、お願いしますと言いながら、宮西の名刺を仕舞った。

宮西タクシーが客の女房を乗せて出て行くと、六人は本堂へ向かって歩き出した。

庭園の美しい三十一番竹林寺から三十二番禅師峰寺まで巡り、今夜のホテルに到着した。