由紀や理絵は、怖いと言いながらも、渡る途中で写真を撮ったりして結構、楽しんでいた。

二連のかずら橋は、観光地化されていないのでロケーションや雰囲気もよく、非常に面白かった。

車に乗り込み、二重かずら橋を出発して、谷を下り、下流の観光地になっている、かずら橋に立ち寄ったが、かずら橋の、すぐ横にかずら橋の見物用にコンクリート製の橋が架かり、観光客が多く居て、周囲の雰囲気には格段の差があった。

こちらのかずら橋だけ見れば、それなりのものなのだろうが、二重かずら橋を見終えた三人には、物足りなさを感じた。

大歩危へ移動する頃には、雨は強くなり、三人は吉野川の船下りを諦めて、ドライブインの上から、峡谷を見物し、由紀と理絵が国道沿いのドライブインの駐車場から峡谷を見下ろして

「綺麗・・・すごく綺麗」
と二人で写真を撮りあっている。

勇太は、峡谷の谷底を流れている川を覗き込みながら

「芙美子お婆ちゃんの言っていた通りだ。こんな高い所まで川の水が溢れてきたなんて信じられないよ」
と独り言のように呟いている。

その後、雨が土砂降りになる中、今夜の宿である、祖谷渓にある温泉ホテルに到着した。

三人は、ホテルから数百メートル下の谷底を流れている川の川原にある、ここの名物の温泉を楽しみにしていた。