そこには両岸に二本のワイヤーを渡してあり、その二本のワイヤーに吊り下げられて、やぐらが、ぶら下がっている。

渡り終えた三人が、何だろうと近くまで見に行くと、ワイヤーに吊り下げられている、やぐらの中にロープが通っていて、谷の両岸にあるロープの端が滑車になっている。

ロープの端の滑車がある周囲は、やぐらへの乗降口になっていて、いわば、やぐらへ乗り降りする為のプラットホームのようになっている。

説明板には「野猿」と書いてあり、注意書きとして三人以上で乗らないことなどと書かれている。

どうやら、やぐらに乗り込み、やぐらの中を通っているロープを人力で手繰り寄せながら川を渡っていく乗り物のようである。

勇太は興味を持ち

「乗ってみようよ」
と言うが、理絵は

「ちょっと怖~い」
と言い、あまり橋を渡りたくない由紀は

「そうよ怖いし、向こう岸まで行ったら、また橋を渡って戻って来ないと、いけないのじゃない」
と勇太に訊いた。

三人が一度に乗るのは、小さくて不可能である。そこで勇太は最初に由紀と二人乗り込み、橋を渡らずに済むようにと、川を往復してきて、次に理絵と乗り込み、川を渡り、橋から戻ってきた。

ロープを引きながら進むと、ガタゴトと揺れながら進み、それなりにスリルがあって楽しかったが、、ロープを引くのは、もっぱら勇太で、額には汗が浮かんでいた。