勇太は、かずらを巻きつけている欄干を左手で持ち、渡っていく。

理絵も怖がりながらも、勇太の後をついて渡る。理絵の次に渡ろうとしている由紀が

「お願い、静かに渡ってよ。揺らさないでよ」

と前方を行く二人に向かって言いながら、へっぴり腰で続いてゆく。

みんなは、できるだけ揺れないように渡ろうとするのだが、なにせ植物を編み込んで縄にしている吊り橋なので、歩くたびに相当揺れてしまう。

由紀は欄干に、両手でしがみつくようにして渡ってゆくが、橋が揺れてギシギシと音はするし、踏み出す足元の棒が折れたり、外れたりしそうで、スリル満点である。

橋の中ほどまで来ると、四、五十メートル上流に、もう一本の、かずら橋が架かっているのが見えるが、今、渡っている橋よりは少し小さめに見える。

三人が対岸まで渡り終えた時に、勇太が

「小さな子供は渡るの危ないよね。足元の棒と棒の隙間が、けっこう開いているから、足を踏み外すと隙間から落ちて、川に転落しそうな気がするよね」

そして上流に架かっている、もう一本の、かずら橋に向かって歩きながら

「何とも言えない風景だね。まるで、歩いている脇の茂みから落ち武者が飛び出してきそう」

と言うと、由紀と理絵が二人して

「やめてよ。薄気味悪い」
と口を揃えて言った。

小さめのかずら橋の渡り口で由紀が

「また渡るのか・・・」
と呟きながら、二人に続いて渡っていると、先頭を行く勇太が

「あれ何。小さな小屋みたいなのが、ぶら下がっているよ」
と上流を指差した。