坂道を下る途中から見下ろした所に、かずら橋が姿を現し、その姿は、まるで密林に架かる大昔の橋の様子であり、映画に出てくるセットのようでもある。

かなりな迫力で見る者に迫ってくる。

三人は橋のたもとまでゆき、かたわらに立っている説明板を読んだ。

それによると屋島の合戦で敗れた平家の落人が、この辺りに落ち延びて住み着いたらしく、彼らが源氏の追っ手に迫られた時に防ぐ為に、あるいは逃げ延びる目的で、すぐに切り落とせるように、架けた橋であるらしい。

橋は、しろくちかずら、という蔦の太いような物で作られていて、鉈などがあれば、すぐに切り落とせそうだ。案内板を読んでいた理絵が

「そういえば、魚梁瀬ダムの展望所に立っていた説明板にも、平家の落ち武者伝説のようなことが書いてあったね。平家の落ち武者の話って、四国山地のあちこちに、あるのかなぁ」
と独り言を言っていた。

橋の渡り口に立つと、かなりな迫力で迫ってくる。

一種、不気味でもあり、橋の向こうから鎧を着けた平家の落ち武者が向かってきそうな気がしてくる。

三人が、恐る恐る渡り始めた時に、由紀が足元を見て

「ちょっと・・・何これ・・・危ないわよ。板が無いじゃない」

橋には、板など張っていない。十センチ角ぐらいの棒を数十センチおきに、かずらで縛って取り付けているだけである。

棒と棒との間隔が、かなり開いてあり、隙間から橋の下の川原や川が丸見えである。

川からの橋の高さは十メートル以上はありそうで、恐怖感が湧いてくる。高所恐怖症の人には、とてもじゃないが渡れそうにない橋である。