「もし晴れていれば、どんなのかなぁ・・・もっと遥か遠くまで見渡せて、雄大な山々が連なった景色でも見えるのかなぁ」
と言った。

雨は降ったり止んだりしながら続いている。

二重かずら橋に向かって進んで行くのだが、行けども行けども下りの道が続いていて、なかなか橋に、たどりつかない。おまけに上って来る時よりも下りの道の方が、路面が悪く、石が転がり落ちていたり、穴があいていたりする。

京柱峠は相当標高の高い峠であり、道は狭く、ガードレールもほとんど無い。

あまり利用される道ではないのであろう、道が良くないところに雨で路面は濡れているし、天気が悪くて暗い上に、樹林が明かりを遮り余計に暗い。

暗い杉の森を抜けたかと思うと、新緑の広葉樹がひろがる。

勇太は慎重に運転しながら、どうにか谷の道にたどり着き、しばらく進むと二重かずら橋に到着したが、その時には、さすがに運転に疲れた表情であった。

二重かずら橋の入り口に車を止め、入り口で見学の料金を払い、渓谷に架かっている、かずら橋を見ようと、坂道を歩き下った。

雨は、ちょうど小降りになっていた。

三人が歩いて行くが、あいにくの雨模様の天気で、観光客の姿は、ほとんど見られない。僅かに坂道を一組の中年の夫婦らしき二人連れと、坂道を下り始めた時に擦れ違ったのみである。

少し下りた所で、先頭を歩いていた勇太が

「おお・・・」
と小さく感嘆の声を上げ、立ち止まった。

理絵と由紀も立ち止まり、勇太が見ている視線の先を見て

「うわぁ・・・」
と由紀が驚きの声をあげて、理絵は
「すご~い」
と言った。