それを聞いて支配人は、笑いながら

「よくご存知ですねぇ。人食いアメゴはどこかには居るという話ですが・・・それ以上は内緒です」

と言うと由紀は

「私たち出会わなくて、運が良かったのかも」

と言うので、理絵が

「その話って、本当に、いつまででも信じているの」
と訊くと

「最初、聞いた時にはね、少しね信じたけど、今わね、まあ居ないかなと思っているわ。だって本当に居たら大きなニュースになっていると思うもの」

と言うので、全員が「な~んだ」という顔をしていた。

宿に戻り、夕食を食べながら、明日からのスケジュールを相談していると、流れていたテレビの天気予報で、小笠原諸島の遥か東南の太平洋上に台風が発生したと言っていて、近くを航行する船は注意するように呼びかけている。

それを見ていた芙美子お婆ちゃんが

「まあ今の時季だから、こちらの方へ進んで来ることは無いわよねえ」
と言った。

あと一ヶ月もすれば、日本本土に影響を及ぼす台風もあるかも知れないが、五月初旬の今頃に向かって来るのは、まず考えられない。

ただ、その後、続けて流れた天気予報では、東シナ海から低気圧が発達しながら進んで来る影響で、明日の、この辺りの天気は午後から下り坂で、夜には曇ってくると言っている。

真知子お婆ちゃんが、それを聞いて

「晴れが持ってくれればいいのにね。せっかく星を見ようと思っているのに」
と言った。