理絵も、だったら言わなくていいのにと、ぶつぶつ言いながらも弁当を食べ始める。

みんなが揃って弁当を、ぱくついていると、勇太が

「おいしい・・・確か中学生の時にキャンプに行って以来だよ。こういう所で食べることなんて無かったし、・・・すっごくおいしい」

真知子お婆ちゃんも

「ほんと最高ね。山が迫ってくるし、森の色も綺麗だし、周囲は大自然って感じで、お弁当も、おいしく感じるわね」

先ほどまで、人食いアメゴを心配していた由紀も、そんな事は忘れたかのように

「めちゃくちゃ美味しい・・・天気はいいし、気分は最高ね」と言っている。

いい性格である・・・

食事を終え、ごみを片付けて、誰もが、のんびりできるようにと、天然の、やなせ杉を使って、この辺りの民家風に建てられている、やなせ杉の家と呼ばれている施設に立ち寄り、清々しい風を受けながら一服した後、今夜宿泊する魚梁瀬で、ただ一軒の宿に着いた。

一度、部屋に入ってすぐ六人は、近くにある、やなせ温泉に向かった。のんびり温泉に浸かり、今日の心地よい疲れを癒して、休息を取りながら温泉の支配人と話をしていると、ここでも山に始まり、ここら辺りに生息する熊や日本カモシカ、そして川魚の話をしてくれて、聞いていた由紀が

「千本山の谷川には、人食いアメゴはいませよねぇ」
と支配人に質問した。