登山口の入り口に着き、車を止めて、杉の大木の森へ入ってゆく。

先頭を歩く勇太が、周囲を見渡しながら

「大きい杉の木だなぁ・・・太いし、高いし、すごいねぇ」

と言いながら、上を見上げている。

そして
「自然のパワーを感じるよね。この堂堂とした大木の森に居ると、何となく勇気が湧いてくるよね」
と言っている。

しばらく歩いていると、自分の前を歩いている理絵に向かって、由紀が言った。

「空気が違う・・・空気が違うわねぇ理絵。すっごく気持ちいい」

理絵も由紀の方へ振り向き

「ほんとう・・・なんか気持ちいいね」
と言った後

「二年前の、歩き遍路の時の山道は、苦しかったり、怖かったり、大変だったね」

と思い出して語りかけた。

由紀も
「そうそう、筋肉痛に襲われたり、亡霊におびえたり、大変だったわ」

と話す二人の会話を聞いていた、お婆ちゃんたちは顔を見合わせて、首をすくめて少し笑った。

お婆ちゃんたちが、昔、山道では行き倒れになった人もいて、その亡者たちの幽霊に出会うかも知れないと言って、由紀を怖がらせてしまったのである。

その後、お婆ちゃんたちも元気に森林浴を楽しみながら、上っていく。

ある程度まで進んで、川原で昼食を取ろうと引き返し、登山道の入り口に戻ってきた時には午後一時近くになっていた。