「桃~っ用意出来てるでしょうね?」
「はーいっ!」
うるさくセミの鳴く音を耳に澄まして、カバンを背中に背負った。
家の前には既に準備万端なママが車の運転席であたしを見ている。
…今日から…
あたしは新しい高校に転入する事になる。
―久住桃奈―
引越しは初めてだった。
慣れない環境で住むなんて、とてもじゃないけど正直辛い。
けどママの為に地元の友達にはサヨナラを告げた。
また会えると思うから…今はママの傍にいたいし。
『桃はココに残る?』
引越しの話が出たのは、高校入学して1週間が経った頃だった。