「ん゙んっ!!」
乱暴に花音を引き寄せ、唇を重ねた
「ちょっ!なつ……」
「黙れよ。」
「んん゙っ!!!」
苦しがってもしらない……
嫌がってもやめない……
……止めることなんて、できないんだ……
「お願いっ…やめっ……ん゙あっ!!」
無理やり口をこじ開け、舌を侵入させる
無理やり絡める舌……
逃げないように、後ろから押さえこむ頭
すべてに力を入れてしまう……
そのうち俺の頬に、冷たい粒が落ちてきた
泣いてるのか……?
そうだよな…。
好きでもないやつに、こんなことされてるんだもんな……
でも……
――ドサッ
「っきゃあ!!」
そのまま花音がもたれ掛かっていたベッドに押し倒した
「なつ…め……?」
止めどなく花音の瞳から涙が零れる
「なぁ―…花音。賭けの命令、今していい?」
「……え…っ」
「……抱かせてよ」
嫌いになればいい……
俺のこと、嫌いになって軽蔑すればいい……
「な、何言って……」
「そのままの意味だけど…?」
花音のブラウスに手をかける
「えっ!ちょっ!!」
必死に抵抗する花音
「邪魔。」
冷たく言い、手を押さえた
「いや!!棗!やめてっ!!」
ブラウスの裾から手を入れた
「お願い…やめて―…」
いつもの強気な花音はどこにもいない
俺の下で、ただ泣くばかりだ……
ゆっくりと手を胸の膨らみに進めていった
ビクッと身体を震わせ、涙を流す
そして胸の膨らみに手が達した瞬間
――パシッ!!
頬に感じる痛み
俺の下で息を切らし、俺を睨む花音
「……って……帰って!!」
部屋中に響いた、花音の叫び声に近い声
俺を睨み、軽蔑の眼差し……
俺はそんな花音を置いて部屋を出た
さっきまでの晴れ間が嘘のように、外は大雨……
まるで俺の心のように…
ははっ……嫌われた……
……軽蔑すればいい
嫌えばいい……
どうせ、隣に居れないなら……
でも………
本当に…本当に俺は……
「好きだったんだ……」
降りしきる雨の中、小さな俺の声は一瞬にして消えてなくなった……
ベッドの上で自分の肩を抱き締める
今だに止まらない震え……
怖かった…?
うぅん。違う……
イヤだった?
それも違う…………
なんか…なんか……
あたしの上にいた棗は…棗じゃないみたいで……
あたしの知っている棗じゃないみたいで……
反射的に手が、棗の頬を叩いていた
ねぇ―…棗。
あたし達、幼なじみじゃなければ、こんな風に拗れなかったのかな?
普通に高校で出会って、恋に堕ちて……
同じ時間を過ごしていたら……
そしたら違う結末が待ってたのかな……?
……なんて…そんなの無理だってわかってるのにね……
――ピロリロリンッ
その時、軽快な音楽が流れた
………誰?
テーブルの上に載っている携帯を手に取った
……蓮?
ディスプレイに写された[高杉蓮]の文字
通話のボタンを押し、耳にあてる
「もしもし。花音?」
「……うん。どうしたの?」
「………」
「…蓮?」
何も聴こえない
「……なんかあったのか?」
「えっ……」
「声…。元気ない。ってか泣いた?」
「っっ!な、泣いてないよ。大丈夫。」
「……そっか」
きっとバレてるんだろうな……
わかってて、騙されたフリをしてくれている……
「れ、蓮こそどうしたの?電話なんて珍しいじゃん」
「あぁ―明日休日だし、花音をデートにでも誘おうかと思って」
「デート!!?」
「まぁ―デートって言っても、いつもみたいに遊んぶだけなんだけど」
ちょっと笑いながら言う蓮
「…で…でも……」
遊ぶことはよくあったけど、それは棗と美羽も必ず一緒だった
「なっ。気晴らしに出掛けようぜ」
………気晴らし。
やっぱり何かあったんだって気づいてるんだよね……
「……うん…行こっか」
「じゃあ、いつもの駅に10時に集合な」
そう言って電話は切れた
このまま、蓮を好きになれば楽なのかな……
もうツラい思いしなくてもいいのかな……?
その日はそのまま眠りについた………
「っツ!やば―っ!」
遅刻だよ!遅刻っ!!
服は……これでいっか。
最近新しく勝ったピンクのワンピースに着替え、メイクをして家を出た
「花音―」
先に来ている蓮が手を振っていた
「ごめ―ん。遅れちゃ………」
………えっ
な…なんで……棗がいるの?
「よし。じゃあ行くか」
そう言って蓮が手を握ってくる
「じゃあな。棗」
「あぁ」
それだけ言って、蓮はあたしを引っ張って歩きだした
な…なんで棗が駅にいたの…?
誰かと待ち合わせ?
誰かって誰……?
もしかして………
「あっ…ごめん……」
そう言ってパッと手を離した蓮
「えっ?」
「いや……手……」
……手?
あっ…手、繋いでたんだ……
「うぅん。いいよ」
「ごめん…。」
「ははっ。」
「なっ、なんだよ」
「だって―。女遊び激しいくせにこんなところは純情なんだも―ん」
「なっ!悪いかよ!!俺はただあの場所から早く花音を連れだしたくて……あっ……」
やっぱり、あたしと棗の間に何かあったってわかってたんだ……
「……ありがとね。蓮」
「いや…。それより大丈夫なのか?」
「…うん。……ねぇ、棗は誰を待ってたの……?」
「………美羽だよ…」
遠慮気味な小さな声で蓮がそう言った
「……そっか…」
何、改めて落ち込んでるの?
2人は両思いだったんだよ……
早く…早く…忘れないと……
2人を祝福してあげられるように…
「ねぇ!」
「へっ!あっ?何?」
突然話しかけたせいか、少し驚きを見せた蓮
「映画、観に行かない?最近観たいのあったんだよね――」
無理に明るく言った
そうしないと、自分を保てそうになかったから……
「………花音…。そうだな!映画館行くか!」
「うん♪」
ごめんね……
ごめんね…蓮……。
今だけ蓮の優しさに付けこませて……