「いや―。意地悪しちゃって悪かったね」
おじさんがニコニコしながら話した
「花音ちゃんが努力してるのは、花音ちゃんのおばさんから聞いて知ってるよ。」
「えっ?」
「夜遅くまで勉強して、今回のテストで上位に入ったんだろ?」
「ほんとなのか?!花音?」
驚いた顔であたしを見てくる棗
「な、何よ…。信じてないの?」
「いや…、だってお前…いつも後ろから数えた方が早い奴だろ?」
「ゔっ…それはそうだけど……」
「それだけ花音ちゃんは頑張ったんだ。」
「………おじさん」
「そんな2人を引きはなそうなんて、間違ってた。悪かった。」
そう言って立ち上がり頭を深く下げた
「ちょっと!おじさん?!」
「親父?!」
頭を下げる姿を棗も初めて見たのか、2人して焦った
「頭上げてくださいよ。」
その言葉にゆっくり頭を上げた
「花音ちゃん」
「……はい?」
「これからも棗のこと、よろしく頼むね。」
優しい笑顔のおじさん
「…っ…はいっ」
そんな言葉にずっと我慢していた涙が溢れてきた
「あれ?わたしが、泣かせてしまったかな?」
ははっとが冗談混じりに言った
「そうかもな。」
棗もクスッと笑みを溢しておじさんを見た
違うよ……これは嬉し泣き。
そう言いたいのに、言葉が出ない
「んん―。じゃあ、おじさんが抱きしめてやろう」
……へ?
おじさんが腕を広げ、待ちの姿勢を見せる
「なっ!それは親父の役目じゃねぇ―んだよ!」
――グイッ
「きゃっ!!」
棗の方に引っ張られ抱きしめられた
「ははっ。本当に棗は花音ちゃんが大好きなんだな」
「うっせ。」
そう言い合っている姿は、喧嘩しているようだったけど……
なぜか笑えて幸せな気持ちになった……
やっぱり親子はこうじゃなくちゃね。
それからリビングにいるお母さんたちに話したら、棗のおばさんは
「ごめんなさい」
って何度も泣きながら謝った。
そして「本当によかった」とあたしたちに笑いかけてくれた
お母さんは棗に「花音をよろしくね」と言っていて、ちょっと…イヤ……かなり恥ずかしかった。
まるで……結婚するみたいで//
って!何考えてんだろ?!
「やっベ!花音っ!学校遅刻するぞ」
棗のその言葉でやっと現実に戻った気がした
時計はすでに8時過ぎを示している
あたしたちは急いで家を飛び出した
強く…強く…
手を握りしめたまま……
「花音!もっと早く走れねぇのかよ!」
「はぁ―…はぁ―…、これ以上…無理……」
さっきから必死に後を追って走ってくる花音
「はぁ―…、もうどうせ遅刻だし、ゆっくり歩いていくか。」
息を整えながら俺は歩き出した
あからさまに「よかった」って顔をしている花音
「体力ねぇな―。花音」
「なっ!それは昨日棗がっ……!」
歯向かってくる花音まで、可愛く見えてしまう
「俺が?」
「イヤ……何でもない…」
顔を俺から反らしうつ向く
「ふぅ―ん。昨日、激しかったからね〜」
「っっ///」
当たりか(笑)
赤い顔が俺を見る
「もう棗なんて知らないっ!」
へっ?
また走り出して離れていく花音
は?
まだ走れるじゃねぇ―か。
そう思いながら花音の後を追った
―――――――――……
「か〜のん♪」
「………」
「花音ちゃん?」
「………」
学校に着いてからも、ずっとこの調子
そりゃさ、昨日はシすぎだって思ったよ?
朝、カらかったのも悪いと思ってる…
………ちょっとだけだけど。
でも仕方ないだろ?
花音の反応って、一々面白いんだから。
「花音〜」
「………」
まだシカトするか!?
「花音、いい加減に……」
――ドカッ
ゔっ……
おもいっきりはね除けられた身体
「花音〜」
ギュッと花音を抱きしめている美羽
「美羽♪」
―……んだよ。
花音もギュッと美羽に抱きついた
前から思ってたけど、こんなに女子ってスキンシップ激しいのか?!
そう思いながら美羽を見るとニヤッと花音に抱きつきながら、笑みを浮かべている
「っっ!!」
わざとだ!
確実にこいつ、わざとだっ!!
「よっ、おはよ。棗」
背中を軽く叩いてきた蓮
「……蓮」
「あれ?なんかテンション低め?………あぁ―」
イチャイチャ?している美羽を見て、納得したような顔を俺に向ける蓮
「……んだよ。その目は…」
「イヤ。もうちょっと大人になれよ」
ふっ。と笑って哀れな人を見るような感じで見てくる
っ〜〜どいつもこいつも―っ
「つ―か。早く教室入ろうぜ。」
あっ、そうだった
今話しているのは廊下
「ほら。花音行くぞ」
――グイッ
「ふえっ!?」
美羽から花音を引き離し、手を握ったまま教室に入った
「ヤキモチ妬き(笑)」
そう言ってニヤニヤ笑っている美羽を無視して
「あっ、棗くん♪おは……えぇぇ――っ!!」
教室に入ったとたんに、騒ぎだすクラスメイト
なんだ……?
あっ、これか……
クラスメイトの視線が、しっかりと繋いでいる俺と花音の手に向けられていた
「ど…どういう……」
遠慮気味に聞いてきた男子
「どういうって…?……あぁ、こういうこと♪」
花音を引き寄せ、頬にキスを落とした
「なっ//!?」
「「きゃぁぁ――っ!!」」
花音は予想通り真っ赤になり、周りからは悲鳴が聞こえる
「なっ、何でこんなことしたのよ?!///」
なんで?
「花音は俺の彼女だろ?」
「へ?」
「それを教えて何が悪い」
周りのクラスメイトは何人か頬を真っ赤に染めている
「っ///だからってこの方法じゃなくてもいいでしょ―っ!!」
花音の叫び声は教室中に響き渡った
それから俺らが復活したことはその日のうちに学校中に広まった
「もぉ―っ!棗のせいで今日1日大変だったじゃん!」
「そんな怒るなって。」
花音との帰り道、未だに怒っている様子―……
ちなみに蓮と美羽はデートだそうだ…
あいつらもラブラブだよな。
「花音、機嫌直せって―」
「イ―ヤっ!」
仕方ない。こうなったら……
「アイス、おごってやるからさ」
「えっ!?アイス♪」