【伝説の開始ー5】


「何をやってるんだ?
お前は」



田崎がそう聞くと、
白井はガスの火を
点けながら



「あの女の為には
やりたくないが、

説得して戻ってきた時に

何か暖かいものを
作っといてくれだとさ。

いくら防寒していても、
あんな小屋にいたら
凍傷するかもしれない
からって、
頼まれたんだ。

一応、
他の人達のも
作ってくれとも
言っていたし、

急いでやらなきゃな」



と忙しそうだ。



「ならワシも手伝うよ」



「手伝うって、
あんた一番初めに
ここに来た時
自分で何したか
覚えてないか?

油はひかないし
肉は焦げたし……
料理はできないだろ」



「う、それは………」



田崎は
一人暮らしだが料理は
しなく、

ほとんど
外食で済ませてしまう
タイプであった。



白井の言う通り、
料理はまったく駄目で、
フライパンすら
まともに握れないので
ある。



「なにもしないってのは
嫌なんでね。

何かできることない
かね?」



「そう言うと思って、
あんたの仕事は
他にあるぜ」



白井は
台所の隅をゴソゴソして
スコップを取り出した。


「大久保さんが、
このスコップで
外に出る戸の雪を
かいてくれだと。

雪のせいで
戸が開きにくいだろ?

あの女のために
部屋を暖めるから、
少し寒いが戸を閉めて
雪かきしてくれだと。

確かに伝言伝えたぜ」


「分かった。
寒いがやってくるか」


「面倒くさいが、
あんたの分も作って
おいてやるよ」


「それは、ありがたい」


白井は
黙々と田崎の分も
作り始めていた。


「じゃあ頼んだぞ」


田崎はスコップを片手に
外の戸を開けた。


なるほど、
確かにこの雪のせいで
戸が開きにくい。


外に出て戸を閉めると、
寒さが身にしみる。


「おお、寒い!!

でもそんなこと
言ってられんな…

さてやるか」


と雪かきを始めた