少しアルコールの入った佐和さんはとても大胆で、お店の中だというのに私の肩に手を回し終始体を密着させており、隙をついては唇を奪われた。

食事が終わり、お店を出ると佐和さんの行動は更にエスカレートして、


「佐和さん、みんなが見ています。」


恥ずかしさから彼と少し距離をとった。


だけど不満そうな彼はすぐに私を捕まえてその腕の中に閉じ込めて、


「見たい奴には見せてやればいい。」


彼らしくない言葉を落とす。


「どうしちゃったんですか?」


彼の態度がいつもとは違うことを感じて彼の腕の中から逃れると、


「真衣…ちゃ…。」


私を睨みつけるようにして立っている真衣ちゃんの姿が目に飛び込んできたと同時に佐和さんの深いため息の音を聞いた。

「あーぁ、紫衣の瞳に映さないように努力してたんだけどな。」


ポツリと零す佐和さんの言葉に、ずっと様子がおかしかった理由がわかった気がした。


アルコールのせいなんかじゃなかったんだ。


佐和さんはいつから気付いていたの?


「ずっと俺達を見てただろ?
そんな風に憎しみに満ちた目で…。
紫衣に何か用があるのか?」


鋭い視線と冷たい言葉を投げかける佐和さん。


「良君が逢いに行ったって本当なの?」


真衣ちゃんは佐和さんを無視して私に話しかけた。


「本当だよ。だけど佐和さんや芽衣ちゃんも一緒で…。」


声を絞り出すようにして応えると、


「いつまでも私の邪魔をするアンタなんか消えればいいのに!
良君を返してよ!
彼は取り付かれたように何かを探しているわ!
彼に何を言ったの?
毎日毎日アンタと一緒に通った図書館に籠もるようになって…。
アンタのせいなんでしょ!
アンタが彼を変えたんでしょ!
返してよ!
良君を返して!」


真衣ちゃんの声が私の心を切り裂いて、言葉が私の恐怖を煽った。