「ご飯食べなきゃ死んじゃう~!」
駐車場でずっと静かだった芽衣ちゃんが急に大声を上げた。
「芽衣、魂胆見え見えだけど?」
芽衣ちゃんに鋭くつっこみを入れる島田さんに唇を尖らせて芽衣ちゃんは応戦する。
「だって久々の地元だよ~。
私と紫衣にはこんな素敵な彼がいるんだよ~って見せつけてやりたいんだもん。」
芽衣ちゃんの言葉に私は呆気にとられて何も言葉が出なかった。
だけど…
「もしかして何か約束入れてるとか?」
芽衣ちゃんならやりかねないと思って尋ねると、
「高校の時によく行ったファミレス覚えてる?
そこに呼びつけたんだ。」
呼びつけたって言葉に一瞬息がつまった。
「私は遠慮しとく…」
きっと芽衣ちゃんは真衣ちゃんと結衣ちゃんを呼び出したに違いない。
「なんで?真衣に石野さん見せつければいいでしょ?」
やっぱり…
芽衣ちゃんは真衣ちゃんが良君と苦しい恋をしたのを知ってるのにどうして呼び出したりしたのか私には理解できなかった。
「私は逢いたくないよ。それに見せつけるなんてなんか嫌なんだもん。」
佐和さんは自慢の彼だけど見世物じゃない。
見せつけるとか、なんか違うと思う。
だから、
「ごめんね芽衣ちゃん。私、行かない。
それにファミレスじゃなくて行きたいお店があるの。」
そう、ずっと高校生の私には敷居の高かった洋風居酒屋。
お酒を出すお店だから一度も行ったことがなかったんだ。
「佐和さん、ずっと憧れてたけど行けなかったお店があるの。
そこに行きたい。」
もう私は芽衣ちゃんの話を聞きたくないと態度で示すために佐和さんにだけ話しかけたんだ。