「紫衣はあなたのものではありませんよ。
もう立派な大人です。」
「まだ学生じゃないか!」
「それでも親元から独立して立派にやってるんでるよ!
それに、紫衣の顔を見ればあなただって認めてやらなきゃと思うでしょ?あの事故以来、私は初めて紫衣が心から安心し、笑っている顔を見ました。
もうあなたも意地を張るのはやめて、認めたらどうです!」
言い争う両親を目の前に胸がギュッと苦しくなった。
だけど私の手をギュッと繋いでくれた佐和さんの手のぬくもりに冷えていく心があたたまっていくのがわかった。
「紫衣は男に傷つけられて階段から落ちたんだぞ…。
あんな男と関わらなければ事故も起きなかったはずだ。
強く反対していればと悔やんでも悔やみきれなかった。
病室で眠る紫衣が流す涙を見る度に俺が紫衣を守るんだって胸に刻み込んだ。
もう俺は紫衣の泣き顔は見たくないんだよ!」
震える手をギュッと握りしめてくれる佐和さん。
初めて聞いたお父さんの本音に息がつまりそうになった。
良君との恋に苦しんでた紫衣。
入院中、新しい世界に不安を抱いていた私。
ずっとずっとお父さんは見守ってくれてたんだね。