悲しくなった。

私の行動がお父さんの機嫌を損ねているんだと思うと、とても悲しく思った。


だけど私の頭を優しく撫でてくれる佐和さん。


彼の言葉で心が軽くなった。


「紫衣のせいじゃなくて、紫衣の為だろ?」


「私の為?」


「そう、紫衣が大切だからだよ。」


佐和さんの優しい言葉に心がとてもあたたかくなった。


私の為にお父さんは機嫌を悪くした。

私が大切だから…。


佐和さんの言葉を何度も心の中で繰り返す。


とても幸せだと感じたんだ。


「佐和さんだったかしら?」


「はい。石野佐和と申します。
ご挨拶が遅れて申し訳ありません。
紫衣さんとおつき合いさせていただいてます。」

お母さんに話しかけられ、佐和さんは丁寧に挨拶を口にした。


キリリとした佐和さんの横顔がとても素敵で、私はお父さん達がいるのも忘れて佐和さんに見惚れていたんだ。


「紫衣はあなたといると幸せそうね。」


「僕も同じなんです。」

「そう。佐和さん、紫衣をよろしくお願いします。」


佐和さんとお母さんの会話を呆けたまま聞いていた私。


だけど、


「紫衣は誰にもやらん!」


お父さんの怒鳴り声を聞いて、我に返った。